2009/10/15

Hannula DE, & Ranganath C. (2009). The eyes have it: hippocampal activity predicts expression of memory in eye movements. Neuron, 63 (5), 592-9.

[Science Direct]


昨年データをとってそのままになっているcontextual cueingのfMRI実験のデータ解析の参考になるかと思って読んでみた。解析の細かいところはよくわからないが、なかなかきれいにまとまっていて大変参考になりました。眼球運動をうまく組み合わせるとMRIでもなにかおもしろそうなことができそうな予感。


INTRODUCTION

HippocumpusとMTLは長期記憶の中でも手続き記憶と関連が深いとされてきた。加えて、シーン・イベントの文脈(およびその中でのアイテム間の関連性)のexplicit recognitionにも関与していることが示唆されている。しかし、最近の研究の中でimplicitな文脈記憶における海馬の役割が注目されてきた。

この研究では、implicit associative memoryにおける海馬の役割を、fMRIと眼球運動の同時計測によって調べようとした。


Method

学習フェイズではnatural sceneとface imageを対呈示して学習させた(216 pairs)。テストフェイズでは、sceneを1000ms先行呈示したのち、7000 msのブランクをあけ、sceneと3 face imagesを呈示して、学習フェイズでsceneと対呈示されていた顔がどれかを回答させた。



RESULTS

Behavioral Performance:
正答率は62.29%。眼球運動に関しては、刺激提示後500-1000msのレンジで、selected faceへの注視時間が、correct trials > incorrect trials。つまり、正しくretriveできたtrialでは、比較的早い時間帯で選択する顔に対して優先的に眼球運動が生じていたことを示唆している。
(コメント:incorrect responseではcorrect responseよりもRTが500msほど遅いので、この解釈はなんとなくすっきりこない。gaze cascade的にrepsonseでalignしたらどうなるのか見てみたい。)

MTL activity during the scene cue predicts disproportionate viewing of matching face
Matching faceとNonmatching faceの注視時間の偏りに基づいてtrialを分けて、MTLの活動を比較。Matching faceが多く注視されていた試行(DPM trials)で、Nonmatching faceにより多く注視されていた試行(NDPM trials)よりも強いBOLD signal、right hippocampusとright parahippocampal cortext、両側のperirhinal cortex(嗅周皮質)で認められた。

DPMの方が正答率が高いので、上記の活動と眼球運動は単にexplicit recognitionを反映しているだけなのかもしれない。それを確かめるために、recognition incorrect trialsでのDPM vs. NDPMを比較したところ、両側のhippocampusのactivationがDPM>NDPM。顕在的な再認に失敗した試行においても、海馬の活動が眼球運動に影響を与えうることを示唆。

Functional Connectivity between hippocampus and PFC
Connectivityを正解試行と不正解試行で比較したところ、テスト刺激が出ている時間帯で、left DLPFCとhippocampusのいくつかの領域、VLPFCとleft hippocampus、left parahippocampus, perirhinal cortexとの間にconnectivityの増加が認められた。


GENERAL DISCUSSION
顔刺激呈示前のscene cue呈示時の海馬の活動は、そのあとに顔刺激が呈示されたときにmatching faceに眼球運動が集中するかどうかを予測する(explicit recognitionが正解かどうかに関わらず)。一方、海馬とlateral PFCのconnectivityは正解試行でより増加する。つまり、海馬の活動は連合記憶の表現をサポートいるが、explicit recognitionが成立するためにはより広い領域を巻き込んだ活動が必要とされることを示唆している。

海馬のimplicit memoryへの関与に、どちらかというと否定的な最近の研究知見がいくつかある。例えば、contextual cueingに海馬が関与しているという知見(Chun & phelps, 1999)に対しては、Preston & Gabrieli (2008)が海馬の活動はimplicit memoryではなく、repeated layoutsに対するexplicit recognitionと対応しているという結果を示している。ただ、display configurationに対するcontextual cueingは、どちらかというとperirhinal cortexなどのparahippocampal regionsに依っているのかもしれない。

この結果は、Moscovitch (2008)の2段階モデルとよく一致するかもしれない。

Practical implicationとしては、眼球運動が連合記憶や海馬の活動をはかる有力な手段となるかもしれないこと。特に意識に上らない過去の経験や記憶が反映される可能性がある。

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